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いまさら聞けない贈与税の基本

執筆日:2024年12月10

皆さん「贈与税」と聞くと、「贈与するほどそんなにたくさん財産を持っていないし、そんなにたくさん贈与されることもないから、私には関係ない」と思っていませんか?

ところが、そうとも言えないケースがあるのです。

贈与税に関連する税金として相続税があります。
この相続税について、基礎控除が縮小されて以降、相続税の申告が必要になる方が増えています。

例えば、自宅土地建物と預貯金が少しあるという両親が亡くなった場合、相続人の人数が少なかったり、核家族化で実家から独立していて小規模宅地の特例が使えなかったりで、そんなにたくさん財産があるわけではない場合でも相続税が発生してしまうケースも多々あるのです。

相続税を少しでも抑えるためには、生前に贈与すること(生前贈与といいます)も対策の一つとして有効です。

この生前贈与についても、2023年度税制改正により、2024年以降はこれまでよりも厳しい要件に改正されてしまいましたが、それでもまだまだ贈与が有効になる余地はあります。

そこで今回は、贈与税の仕組みや相続税との関係について、基本的な事項のみに絞って、できるだけわかりやすい言葉で説明させていただきます。


※この記事は執筆時の情報を基に作成をしております。そのため、最新の情報とは異なる場合があることをご了承ください。

目次

1.そもそも贈与税とは

まず、はじめに、贈与税法という名前の税法はありません。

所得税は所得税法、法人税は法人税法、消費税は消費税法というように、なじみのある税金にはその税金の名前がついている税法があることが多いです。

なので、贈与税には贈与税法という税法があるように思えてしまいますが、贈与税法という名前の税法はなく、相続税法という税法の中に贈与税についての規定があります。

これは、贈与税が、相続税の補完としてできた規定だからなのです。

贈与税の規定ができた背景をご説明しますと、例えば、ある資産家がいたとして、「自分が死んだ後、相続税をたくさん国に払うのは絶対に嫌だから、死ぬ前に子どもたちに贈与をたくさんして財産を極力減らしておいて、相続税を国に払わないで済むようにしておこう」と考えたとします。

もし贈与税という規定がなかったとしたら、この資産家の目論見はそのまま問題なく実行され、どんなにたくさん財産があったとしても、相続税を国に1円も払わないまま子どもたちに資産の移転が可能になってしまいます。

それは問題だということで、このような目論見を排除することを目的として、相続税法の中に贈与税の規定が作られました。

このような背景があるので、相続税と贈与税は密接な関係があり、相続税の計算をする際にも贈与税を考慮する規定があったりしますが、その点については後ほど触れていきます。

2.贈与税の計算

贈与税は、財産を贈与した人(贈与者といいます)から財産を贈与された人(受贈者といいます)が、贈与された財産の価額に応じて課されます。
受贈者は、贈与された財産の多寡に応じて贈与税額を計算して納付するのです。

財産をたくさん贈与された受贈者はたくさん贈与税を納付しますし、財産を少しだけ贈与された受贈者は少しだけ贈与税を納付します。
担税力があるところからたくさんの税を徴収するという、税金の基本的な考え方の1つですね。

それでは早速、贈与税の基本的な計算方法についてみていきます。
贈与税額は、基本的に次の算式で計算して求めます。

 (贈与された財産の価額 - 基礎控除額)× 贈与税率 = 贈与税額

「贈与された財産の価額」は、受贈者が1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与者から贈与された財産の価額を合計した額です。
財産の価額の評価方法については、財産評価基本通達という規定の中で詳しく定められていますが、ここでは割愛します。

複数の贈与者から財産を贈与された場合には、すべての贈与者から贈与されたすべての財産の価額を合計します。

「基礎控除額」は、現在、110万円と決められています。

例えば、Aさんから100万円、Bさんから100万円を贈与されたCさんの場合、「100万円+100万円=200万円」が、申告しなければならない贈与された財産の価額です。

たまに、「AさんからもBさんからも100万円ずつ贈与されたのだから、どちらも基礎控除以内に収まっているし、申告しなくても大丈夫」と勘違いされる方がいますが、そのようにはなりません。

あくまで、1年間に贈与者から贈与された財産の価額の合計額が基礎控除110万円以内に収まっているかどうかで判断するので、たくさんの贈与者から少しずつ贈与されたとしても、そのすべてを合計して計算した金額が基礎控除110万円を超えていれば、贈与税の申告と納付が必要になります。

「贈与税率」は、贈与の種類に応じて特例税率と一般税率があり、それぞれ以下のように定められています。

<特例税制>

直系尊属(父母や祖父母)から18歳以上の受贈者(子や孫)へ贈与する場合に使用する率です。

<一般税制>

特例税率を使用する贈与以外の贈与の場合に使用する率です。

父母や祖父母からの贈与の場合には、それ以外の人からの贈与よりも少し優遇されていますが、それでも最低で10%、最高だと55%もの税率になっています。

Cさんの例で計算すると、贈与税額は、以下のようになります。
 (200万円-110万円)×10%=9万円

200万円を贈与されたCさんは、国に、9万円の贈与税を納付することになります。
せっかく200万円を贈与されましたが、Cさんの手元に残るのは191万円ということになるのですね…。

3.贈与税の申告

ここまでで、贈与税の考え方や計算方法の基本についてはおわかりいただけたと思います。

次に、基礎控除内では収まらなかったために申告が必要になってしまった場合に、どのような手続きをいつまでにする必要があるのかについてみていきます。

結論から申し上げますと、贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税申告書を税務署に提出することにより行います。
贈与税の納税についての期限も、贈与を受けた年の翌年3月15日までとなっています。

3月15日と聞くと何か思い当たりませんか?
実は、贈与税の申告は、所得税の申告と同じような手続きなのです。

所得税の申告を行う方は比較的多いので話題になりやすいかと思いますが、実は所得税の申告と同様、国税庁の「確定申告書作成コーナー」というページで贈与税の申告書も作成できるのです。

現時点では、2023年分の申告書しか作成できませんが、参考までに、以下のURLで贈与税の申告書も作成できます。
【確定申告書等作成コーナー】-作成コーナートップ

受贈者は、1年間に贈与された財産の価額をすべて合計して申告書を作成し、翌年3月15日までに納税地の所轄税務署へ提出する必要がありますが、なかには、年内のうちに「今年はもう誰からも贈与されることはないから、早めに贈与税申告書を作成して提出してしまおう」と考える方がいらっしゃいます。

しかし、それはできません。
あくまでも、1月1日から12月31日までの間に贈与された財産のすべてを合計しなくてはならないので、年の途中では「すべて」を合計して確定することはできないからです。

贈与税の申告は、期限を守って翌年2月1日から3月15日の間に行いましょう。

4.相続税との関係

冒頭に、「贈与税は、相続税の補完としてできた規定」だとご説明しました。
この点について、基本的な考え方に絞ってみていきます。

続税も、おおまかには、贈与税と同じような計算によって求めます。
実際には、贈与税よりも複雑な計算方法になっていますが、ここではわかりやすくするためにあえて簡単に、相続税も以下のような算式で計算すると考えます。

 (相続した財産の価額 - 基礎控除額)× 相続税率 = 相続税額

「相続した財産の価額」には、「相続税を払いたくないから生前に贈与しておこう」と考える資産家のように、相続の発生を見越して行った生前贈与により贈与した財産の価額も含めます。

これを生前贈与加算といいます。

生前といっても、大昔に贈与した財産まで含めるのではなく、現在の規定では、相続開始前7年間に贈与された財産については含めるということになっています。
以前は、相続開始前3年間の贈与についてのみ加算すればよいという規定でしたが、2024年分の贈与から改正されてしまいました。

贈与したからには、7年よりも長生きしないと「贈与して相続税を減らしておこう」とした意味がなくなってしまいましたね・・・。

ここで1つ疑問が生じると思います。
「この生前贈与加算された財産には、すでにその贈与がされた年の贈与税が課されているかもしれないのに、さらに相続税も課されてしまうなんてひどくない?」という疑問です。

例えば、ある年において、資産家Dさんが長男Eさんに200万円を贈与したとします。Eさんは、その翌年3月15日までに贈与税申告書を提出し、9万円の贈与税を納付することになります。

そして、その後7年以内にDさんがたくさんの財産を残したまま亡くなってしまった場合、Eさんは相続税の申告と納付もしなくてはなりません。

贈与されたときに9万円の贈与税を納付したうえ、相続財産にも加算されてさらに相続税も課されてしまうのはさすがに気の毒ですよね。

そこで、贈与税額控除という規定があります。
正確には細かくて複雑な計算方法がありますが、おおまかには、Eさんが納付した贈与税9万円のうち一部を相続税から控除することができるのです。

このように、「贈与税は、相続税の補完としてできた規定」ではありますが、相続税の計算の際は、きちんと調整されるようになっています。

5.まとめ

ここまでで、贈与税の基本的な事項についてはおわかりいただけたのではないでしょうか?

実際には、配偶者控除があったり、相続時精算課税制度があったり、その他にも細かくて複雑な規定がたくさんありますが、おおまかには、

・贈与税は、財産を贈与された人が納付しなければならないもの
・相続が発生した場合には、生前贈与加算しなければならない場合がある
・生前贈与加算されたとしても、納付した贈与税のうち一部は控除される場合がある

といったポイントを押さえていただければよいかと思います。

細かくて複雑な計算については、ぜひ弊社へお問い合わせくださいませ。

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